山馬筆ってどんな筆?

書道
投稿日:2020年2月21日
山馬筆

第15回目の書道専門店のエピソードストーリーは、山馬筆です。
山馬筆とは、どのような筆なのでしょうか?
今回は、山馬筆の特徴や書法について、スタッフとお客さんのやりとりの中で解説させていただきます。

  1. 山馬筆をすすめる
  2. 山馬筆の特徴
  3. 山馬筆の書法
  4. 山馬筆の値段
  5. 山馬筆を古典の臨書に使うと

書道短編小説 山馬筆篇

山馬筆をすすめる

くもり雨は、朝の5時頃から降りはじめ、さらに激しくなっている。

分厚い雨雲のせいで、いつもよりあたりは薄暗い。

憂鬱な気持ちにさせる天気を視界の端に感じながら、黙々と開店準備をすすめた。

いつもなら見世の前に出すはずの看板や商品の台座は、中に入れたままにしている。

雨降りのために、見世全体がなんだか狭苦しい。

見世のドアに引っ掛けてある準備中と書かれた札を、営業中と書かれた面にひっくり返そうとしていたときだった。

この時間帯に開くことのない見世のドアが開いた。

スーツ姿の男性が、ドアの側に立っている。

常連のお客さんである深山さんだ。

開いたドアの外から、雨の匂いが少し漂ってきた。

「開店前にごめんやで。

なかなか立ち寄る時間が無くて、出勤前に来させてもらったんやけど、入らせてもらって大丈夫かな?」

今日の天気とは対照的な明るい声が、見世の中を包み込んだ。

「どうぞ、どうぞ。何かお探しですか?」

問い合わせメールの返信をしていたパソコンのキーボードから手を離し、カウンター越しに返事をした。

「今、古典の臨書してるんやけど、俺が使ったことが無い筆で、何か面白いのないかな?」

「まだ買われていない筆で、おすすめするなら。」

左斜め上に目線をやりながら少し考えて、

「山馬筆は、使われたことありましたっけ?」

「サンバ?カーニバルくらいしか知らんわ。」

そう言って、ガハハと豪快に笑う。

深山さんは、いつもお元気だけれど、今日も朝から快調のようだ。

山馬筆の特徴

「山馬は、東南アジアやインドに生息する鹿の一種なんですよ。

山馬の毛は、硬い毛が特徴で、古典の臨書に向いています。

楷書、行書、草書の三体にも対応します。」

「ほんまや。えらい毛の硬い筆やね。

どうやって書いたらええんかな?」

山馬筆をお渡しすると、思いのほか硬い毛に少々面食らっているように見えた。

筆に備わる毛の本数は少ないけれど、1本1本の毛が太くて硬いので、しっかりしている。

外側の毛が開き、まとまりがない。

これが、書いた時、線のガサつきとなってあらわれる。

ガサつきを抑えたい場合には、少し墨量を増やせば、ある程度軽減される。

山馬筆の書法

「この筆は、穂自体が硬いので、直筆のままで書くと、線の太さが出しにくいんです。

側筆にして、硬い穂がしなる強い弾力を確認しながら、しなやかにゆったりと使っていただくとよいと思います。

なかなか強い反発力ですが、墨をつけると多少はしなやかになりますよ。」

山馬筆の値段

山馬の毛は、現在ではワシントン条約で輸入が制限されているため品薄だ。
価格も昔に比べて高くなってきている。

「この山馬筆が、古典の臨書に向いている理由って何かあるの?」

山馬筆に少し興味を持っていただけたようだ。

山馬筆を古典の臨書に使うと

「普段は、羊毛筆を使われていますよね?

山馬筆は、羊毛筆のように線に偶然の変化などはほとんど出ないんです。

書く人の実力がハッキリでる筆なので、基礎練習にはうってつけの筆なんですよ。」

剛直な線をうみだす山馬筆は、柔らかい線を特徴とする羊毛長鋒筆の対極にある筆と言える。

「なるほどね。はじめは書きにくいかもしれないけど、練習用に買ってみようかな。」

天気に影響されて、朝から少し鬱々とした気分だったけれど、日差しが差し込むように、私の心と見世の中が明るくなったように感じる。

雨の日に太陽のように明るい深山さんが来てくれたおかげだ。

山馬筆を手にした深山さんをお見送りしようと、見世のドアを開けた。

再び雨の匂いとともに湿気を感じたけれど、もう気分は晴々としていた。


楷書、行書、草書の古典臨書をお考えの方には、お試しいただきたい1本です。

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