書道筆の洗い方

書道
投稿日:2020年1月31日
書道筆の寿命

書道筆の洗い方は、お客様から最もよく聞かれるご質問の1つ。
どれだけが正解ということではなく、筆の洗い方はいろいろありますが、大阪教材社がおすすめしている洗い方を、第11回目の書道専門店のエピソードストーリーでご案内いたします。

  1. 固まった書道筆
  2. 書道筆の洗い方
  3. 小筆の洗い方&おろし方

書道短編小説 書道筆の洗い方篇

固まった書道筆

肌を刺すような太陽光が照りつける8月、真夏の日差しが短く濃く店内に入り込んでいる。

メールの返信内容を吟味していると、若い女性が珠のような汗をハンカチで拭いながら静かに店に入ってきた。
彼女の名前は太田恵子さん、はじめて来店されるお客さんだ。

入店するなり、書道筆のコーナーで小筆を食い入るように見入っている。

店のスタッフである書道歴40年の篠原は、そんな彼女の様子をしばらく見守っていたが、様子を見かねて声をかけてみた。

「よかったらお伺いしましょうか?」

篠原は、お客さんの視界に入る角度から穏やかにお声掛けしたつもりだったが、太田さんは余程集中して筆を選んでいたのだろう、ビクッと反応し、目を丸くして篠原を見た。

「筆のこと聞いてもいいんですか?」

太田さんは、少し明るい声色で聞き返す。

「もちろんです。道具の特徴を正しくお客様にお伝えするのも専門店の仕事ですから。
ご遠慮なく質問してください。」

詳しく聞いてみると、今まで筆などの書道具は、一般的な町の文房具屋さんで買っていたそうだ。
独学で書道を学んできたものの、筆の洗い方や使い方で分からないことが多く、1人悶々と悩んでいたらしい。

そんなときインターネット検索で、自宅から数駅先に書道専門店があることを知り、当店を訪れてくれたのだった。

「今まではどんな筆をお使いですか?」

「普段使っている筆でしたら、今持っています。」

そう言うと、帆布のトートバッグから、竹の筆巻きを取り出した。
慣れない手つきでヒモをほどくと、筆が2本姿をあらわした。

筆巻から出てきた2本の筆は、普段太田さんが使っている大筆と小筆。

2本ともさほど使っていないようだが、大筆は毛の根元が玉ねぎ状に膨れており、カチカチに固まっている。
小筆は根元までおろされた毛がバサリと筆管からのびていた。

「普段、どうやって筆を洗っているんですか?」

篠原は、筆の穂を見つめながら太田さんに質問した。

「日によって違いますが、流水でなんとなくの頃合いまでです。」

「なるほど、この大筆の根元を見てください。
筆の根元が膨らんで、球根みたいになっているのが分かりますよね。
これは墨のニカワが根元で固まって起こる現象なんですよ。
書くとき、筆の線が割れませんか?」

「割れます!ちゃんと洗っているつもりなんですけどね。」
と太田さんは困惑した表情を見せる。

書道筆の洗い方

大筆の洗い方としては、
まず太田さんのように墨が出なくなるまで流水で流していただいたり、流水の着地点に水を溜める容器を置いて、その水に筆をつけて振りながら洗ってください。
黒い水が出なくなるまで、この作業を続けます。

根元の墨もしっかり洗い流す必要がありますから、根元を揉むように、中心部分の墨を落とすイメージで洗ってください。

洗い終わったら、
風通しの良い日陰で吊った状態で干します。そして翌日になったらまた洗います。根元に溜まっていた墨が吊ることで降りてくるんですよ。
洗い終わったら、また日陰で3日程吊り干しして完了です。」

「そんなに手間をかけないとダメなんですね。」太田さんは少し驚いた表情で、筆の穂先を触った。

「書道家の方によっては、筆の根元に口をつけて、墨を吸い出す人もいるんですよ。」

太田さんは黙ったまま、目をくりくりさせている。

小筆の洗い方&おろし方

「あっ、ちなみに小筆のおろし方も説明しておきますね。
小筆は、穂先の半分から2/3くらいにしてください。
小筆の洗い方ですが、小筆は洗いません。洗わずに書き損じた半紙などで拭う程度でOKです。」

「どうしてですか?」

小筆は糊固めしている部分を残すことで書きやすくなるからです。この筆は書きにくくなかったですか?」

太田さんはハッとした表情で、
「確かに使いづらかったです。自分の腕が悪いと思ってました。」と恥ずかしそうに笑った。

「逆におろすのが短かすぎると、書くときの摩擦が強くなるので、毛が劣化する原因になります。道具の使い方を正しく理解すれば、上達も早くなりますよ。」

太田さんは、篠原の言葉に少し安堵した表情で、

「そう言っていただけたら、すごく心強いです。」


今回、太田さんは、筆の洗い方の疑問が解消されましたが、筆に限らず道具の扱いを正しく学ぶことで問題が解決するケースが多くあります。
もし分からないことがあれば、専門店で積極的に情報を得てください。

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