羊毛の穂先短い書道筆

書道
投稿日:2019年12月29日
羊毛の短鋒筆

シリーズでお届けする書道専門店でのエピソードストーリー、第2回目。
今回は、書道筆の羊毫短鋒筆(羊毛短鋒筆)についてです。
羊毫短鋒筆とは、穂先の短い羊毛筆のこと。
この筆の特徴やメリットを書道販売店の日常を絡めながらご紹介いたします。

羊毛で穂先の短い書道筆である羊毫短鋒筆は、使いこなす上で、どのような特徴があり、どのように使うのでしょうか?

  1. 書道筆の棚から羊毛短鋒筆
  2. 羊毛短鋒筆の特徴
  3. 羊毛短鋒筆の利点

この筆を使う上で主なメリットは以下の4つがあげられます。

1.よい毛が使われていることが多い
2.太い線が出しやすい
3.墨含みがよい
4.扱いやすい


書道短編小説 短鋒の羊毛筆篇

書道筆の棚から羊毛の短鋒筆

筆の掃除鬱陶しい天気が続く梅雨の時期、今日は久しぶりの晴天だ。

インターネット通販の出荷の段取りを一通り済ませた15時過ぎ、

今日は空き時間を利用して、ずっと気になっていた筆棚の整理をするつもりでいる。

書道専門店の店舗の中でも、筆の棚は、特にホコリがたまりやすい。
最近、掃除したはずなのに、いつのまにかすごい量のホコリがたまっていたりして、驚かされることがある。
ホコリってどこから発生して、なんでこんなに溜まるんだろう。
筆を立てるための筆棚の凹みがホコリのポケットになって、底に集積されるのだ。

美しい店舗を維持するには、販売員にとって筆棚は、デンジャラススポットだ。
お客さんが筆を手にとったとき、筆管にホコリも一緒にブラ下がっている、そんなことを想像しただけで冷や汗がでてくる。

さあ、掃除開始だ!

大きなホコリは掃除機で吸い取り、四隅の細かなところを綿棒と濡れタオルでかき出す。
窓からはやわらかな夕日が差し込み、その中をゆらゆらとホコリが舞っている。

普段はおっくうになってしまっている掃除や整理だが、はじめてみると、明らかにキレイになっていく様子がなんとも気持ち良い。

A型っぽくないと言われる自分だけれど、普段現れないA型気質が少しだけ顔をのぞかせた。

書道筆の棚を掃除する効用は他にもあって、違う筆が紛れていることに気づけたり、製造時のミスで穂先が本来のつくりと違う不良品を発見出来たりする。
書道で使う筆は、機械製造出来ない繊細な工程によってつくられている。
1本1本筆職人の手作りであるが故に、まれに不良品が発生する。

筆棚掃除中、ふとある筆が私の目に留まった。
羊毛でつくられた穂の短い筆、羊毫短鋒筆だ。

穂先が寸胴型のシルエットで見ようによっては、なかなか可愛らしい筆。

「この筆、最近あまり売れていないな。」

羊毛の短鋒筆は、昔はよく売れていて、需要の高い書道筆だった。

当時、売れるから多めに仕入れた在庫が、筆コーナーの引き出しに当時のままの状態で眠っていたのだ。
毛質もよく、時間の経過を感じさせない良品だ。

羊毛短鋒筆の特徴

羊毛の短鋒筆羊毛短鋒筆は、名前の通り穂が短い書道筆。
そのため、筆軸の角度を変化させるなどの技術に対応しにくい、そんなデメリットがこの筆にはある。

作品の中に変化を求める現代書には、残念ながら羊毛の短鋒は不向きなのかもしれない。
流行り廃りは世の常だが、書道の筆にもそれは存在し、この筆も最近は好んで購入するお客さんが減っているのだ。

羊毛短鋒筆の利点

でも、羊毛の短鋒筆には、1本は手元に置いておきたくなるいくつかの特徴がある。

それは大きく4つあって、

1.よい毛が使われていることが多い
2.太い線が出しやすい
3.墨含みがよい
4.扱いやすい

1.よい毛が使われていることが多い

短鋒筆は、読んで字のごとく短い毛を集めて筆にしているので、長い原毛を必要としない。

長い原毛を必要としないハードルが下がる分、上質の毛を使われることが多く、多少乱雑な扱いをしても、寿命が長いのだ。

消耗品の書道筆だからこそ、長く使えるのは嬉しいポイントではないだろうか。

2.太い線が出しやすい

ボテッとしたその穂は、繊細な細い線を書くには不向きではあるけれど、穂の開きがよく、太い線が出しやすい。

3.墨含みがよい

穂が短いので、長い線は出しづらいが、墨含みがよい。

墨つぎの回数を極力減らすことが出来るのは、大きなメリットだ。

4.扱いやすい

通常、羊毛筆はコシが弱いけれど、短鋒ということで毛が短いので、コシの弱さを感じさせない。

比較的初心者の方にも扱いやすいと感じてもらえる書道筆なのだ。

以上、4点がこの書道筆をオススメする理由になる。

羊毛短鋒筆は、篆書・隷書・楷書・行書・草書の五体全てに対応するオールマイティな筆で、特に太い隷書、顔真卿のような楷書に適している。

そんなことを考えているときに「はっ!」と我に返った。
掃除していたはずなのに、羊毛短鋒筆を握りしめて、この書道筆の妄想にふけってしまっていたようだ。

「一点見つめてフリーズしてるで。」

一緒に働いてくれている妻に、たまにこうツッコまれることがある。

おそらく書道具で妄想にふけっているこの瞬間を目撃されているのだろう。

さあ、妻にツッコまれる前に仕事に戻ることにしよう。

書道ショートストーリー 第1回目 プロローグ
書道ショートストーリー 第2回目 羊毛の穂先短い書道筆 
書道ショートストーリー 第3回目 おすすめの筆ペン
書道ショートストーリー 第4回目 淡墨の作り方
書道ショートストーリー 第5回目 落款印(雅号印)をオーダーする
書道ショートストーリー 第6回目 針切の臨書に適した小筆
書道ショートストーリー 第7回目 細光鋒の長い羊毛書道筆
書道ショートストーリー 第8回目 かな条幅の書道筆
書道ショートストーリー 第9回目 仮巻表装を依頼する
書道ショートストーリー 第10回目 額装された書道作品
書道ショートストーリー 第11回目 書道筆の洗い方
書道ショートストーリー 第12回目 半紙等の保存方法
書道ショートストーリー 第13回目 書道料紙を選ぶポイント
書道ショートストーリー 第14回目 色紙を書道用に使う
書道ショートストーリー 第15回目 竹筆の使い方 書道特殊筆 

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