針切の臨書に適した小筆

書道
投稿日:2020年1月8日
針切 書道

今回の書道専門店エピソードストーリー(第6話)は、かなの古典である針切の臨書におすすめの筆をご紹介します。

これから針切を臨書しようと思っている方、
現在針切を練習中の方、
どんな筆を使ったらよいかとお悩みではないですか?

  1. かなの古典・針切の臨書におすすめの小筆をご紹介する
  2. 針切の特徴
  3. 針切に適した小筆

針切の特徴:
名前の如く細い筆線が特徴で、美しく流動的です。
他の古筆と比べても文字のサイズが小さく、連綿が多い、行が右に流れるなど。

登場する道具:
小筆 黒軸面相 一休園製


書道短編小説 針切に使う小筆篇

かなの古典・針切の臨書におすすめの小筆をご紹介する

書道専門店の大阪教材社の営業時間は、朝9時から夕方の17時。
もうそろそろシャッターを下ろそうかという閉店前、もう外は薄暗くなってきている。

今日は月末棚卸で、1人で黙々と筆の数を数えていたとき、

「まだ営業してますか?」

近所にお住まいの常連客である太田さんが、入口の扉を少し開けて、申し訳なさげに頭だけ覗かせて尋ねた。

「大丈夫ですよ、どうぞお入りください。」

そう言うと、私は筆棚に陳列されている筆の在庫数を数える手を止めて、右手で店内に促すように案内する。
「あっ、数えてた筆、何本やったか忘れた。」
ふいに浮かんだ心の声が外に漏れないように、おもわず咳払いした。

「来週の書道教室で針切を練習するのに使う筆を探してて、、」
最近、太田さんは、針切の臨書をはじめたのだ。

針切の特徴

針切とは、その名にある通り、針のように細く鋭い線が特徴の仮名書道の古典のお手本。

美しく流動的な自由さがあり、書道を親しむ人にとって、もっとも好まれる仮名の1つだ。

針切を練習するというのは、針切という古筆(昔の人の美しい筆跡)を書道の練習のお手本として練習(臨書)するということ。

針切に適した小筆

「それなら、面相筆はいかがでしょう?」
そう言って、筆棚の中から最も穂先が細い黒軸の筆を手渡した。
熊野筆メーカーである一休園製の黒軸面相だ。

面相筆とは、元々日本画で人物や仏像の顔を描くために作られた筆で、細い線を描くのに最も適している。

穂にはほとんど厚みがなく、画像のようにホッソリとしている。
楷書の点画で、起筆・収筆などをはっきりさせるものには不向きだが、細い線を書くには最適なのだ。
面相筆を書道の筆として使う場合は、太さをあまり要求されない古典のかなに使うのがオススメ。

「面相筆の毛質は、イタチ毛で腰が強く、弾力があるので、強い線というよりは、柔らかな線を書くことが出来ます。
リズム感のある小さな字を書くのに最適ですよ。」

「それなら針切で使うのに良さそうやね。」

「そうなんですよ。」

「この筆はどうやっておろしたらいいの?」

「おろし方は、少なくとも穂先1/3以上はおろしてくださいね。全部おろしていただいても大丈夫です。まとまりがよく、墨継ぎも気にせず連綿を書き続けることが出来ます。」

「あぁ、私いつも筆の先しかおろしてなかったわ。この筆は半分くらいはおろしてみようかな。」

そう言いながら、筆先を凝視する太田さん。

「まだまだ勉強不足なんやけど、書道で面相筆を使うときってどうやって書いたらいいの?」

「使い方はですね、直筆にして真上から圧をかけながら使うんです。

面相筆の特徴である反発力を活かしながら書きます。筆を速く運ぶと線が弱くなるので、注意が必要です。」

「じゃ、これもらおうかな。お会計してもらえる?」

レジカウンターで、筆を専用の袋に入れる。
移動中にキャップが外れて筆を痛めるのを防ぐために、筆を購入いただくときは、必ずこの紙袋に入れるのだ。
お会計は880円、1000円でお釣りをお渡しすると、

「これで今晩から練習出来るわ。閉店時間やのにごめんね!」

5時20分をさす店内の時計を横目に、足早で店を出ていかれた。

シャッターを閉めて、筆の棚卸に戻ろうかと思った5秒後、再びお店の扉が開く。
入口を見ると、そこには先程の太田さんが立っている。

「何回もごめん、ついでに料紙も買って帰るわ!」

思わず2人で顔を見合わせて笑う。

「どうぞ、時間気にせずにゆっくり選んでくださいね。」

小筆 黒軸面相 特大 一休園

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