久保田号 書道筆メーカー熊野筆の雄

書道
投稿日:2020年4月22日
久保田号

久保田号 書道筆メーカー熊野筆の雄

筆メーカー久保田号は、特に羊毛筆が多くの書道家から高い評価を受けている熊野筆の老舗です。

久保田号は、明治44年に久保田正記によって久保田久天堂として創業されたことからはじまります。
久保田号には、その長い歴史の中でただ書道専門店に卸すだけではなく、一貫して書写教育の現場や書道家に寄り添いながら、筆の研究を重ねてきたことで得たノウハウがあります。
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久保田号×書道家 共同開発の書道筆

久保田号は、青山杉雨先生が監修した「杉影」「杉友」や手島右卿先生が好んで使用した高級羊毛筆「寿昌」「墨吐龍」などを生み出して来ました。
これは筆匠であり書家であった二代目舗主・久保田竹塢氏の代に培われた精神です。

現在も書道筆、画筆、その他様々な特長の筆を世に送り出しておられます。

なぜ久保田号は筆づくりの技術が高いのか?

久保田号は、毛の使用寿命の長い高級羊毛筆や、傷み易い特大書道筆を数多く製造販売してきました。
数多くの筆づくりを担いつつ、同時に行ってきたことがあります。
それは、筆の修理です。
筆メーカーとしては、筆の販売本数を伸ばした方が収益が上がるはずですが、久保田号は積極的に修理も受け付けてきました。

筆修理は多くの場合、良心的な価格で受けてくださいますが、場合によっては購入費用ほどの料金がかかる可能性もあります。
お客様が苦労して製造した筆を大事に使ってくださるのは、造り手にとって筆職人冥利に尽きるありがたいことなのです。その気持ちに報いたい思いが、今も続く筆の修理につながっているのです。

修理や造り変えの依頼を受けることで、筆メーカーの久保田号にとっても副産物がありました。
多くの修理をこなすことで、必然的にその技術が集積され、職人の技術向上につながったのです。
久保田号では、長い歴史の中で数千本の筆を甦らせています。

久保田号のもう1つの強みは、各筆司が作った筆穂を軸につける「繰込み士」を設けていることです。
繰込み作業を1人の筆司が兼務しており、穂の仕上りを職人の目で最終検査出来ることで、初期不良を限りなく無くすことに成功しています。
久保田号の筆の愛用者が多いのは、使いやすさ以外に不良が少ないことによる顧客満足の高さもあるのです。

久保田号の社風

久保田号の仕事は、納品される筆を見れば、その丁寧な仕事ぶりが分かります。
何度か筆工場の見学にもお邪魔していますが、地味であるけれど、筆づくりに必要な工程を実直にこなしておられる姿に好感を持ちます。

ある職人さんが話していた言葉が大変印象的で、久保田号という会社の社風を表していると感じました。

「我々の筆づくりは、筆職人みんなで役割分担しながら、筆づくりを支えています。
ですから、次の工程の職人さんが仕事をしやすいように、丁寧に筆づくりに向き合っています。
出荷した筆を使ってくださるお客さまにも私たちの思いが伝わって、喜んでいただけたら嬉しいです。」

熊野筆のメーカー久保田号は、令和2年3月で創業110年目を迎えておられます。

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久保田号の社史

創始者、久保田正記は明治44年3月現在の前身である「久保田久天堂」を創業。

爾来、幾多の製筆に苦心の改良を加え、大正10年12月
「広島物産陳列館中国生産品共進会」等に出品し表彰を受ける。

昭和5年11月 天皇県下行幸の際、本県特産品として毛筆展覧の
光栄を賜り、同年之を機に号を「久保田号本舗」と改名する。

昭和23年8月 「久保田号本舗」を株式組織とし、
「株式会社 久保田号」とする。

昭和46年4月 天皇皇后両陛下が広島県植樹祭に行幸の際、
両陛下の献上筆製作の光栄を賜る。

昭和52年11月 東京椿山荘美術館において
「文房四宝伝統工芸展」で「壽昌筆」が最優秀賞の栄誉を承ける。
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