水墨画小説「線は、僕を描く」読まれました?

水墨画
投稿日:2019年8月31日

「線は、僕を描く」という水墨画をテーマにした小説をご存知ですか?

ラジオを聞いていて、たまたま水墨画を題材とした砥上裕將さんの小説「線は、僕を描く」が評判だと耳にしました。
水墨画道具を扱う自分にとっては、興味深い情報です。
ネット検索してみると、出てくるわ、出てくるわ書評の高評価の嵐。しかも、そのコメントが熱いものが多く、アマゾンの星の数も多い。
居ても立っても居られず、早速最寄りの本屋さんへ急行。

中規模程度の広さのその本屋さんに入ると、比較的目立つ入り口付近の場所に2列に並べられた「線は、僕を描く」を発見。
こんな目立つ場所に、しかもよく目につくように2列に並べられている!
本屋さんの陳列の仕方に、本屋さんのこの本に対する期待の高さが伺えました。
この時点で私の期待値もかなり高まります。
水墨画をテーマにした小説ってなかなか無いですし、それが一般的な本屋さんでこんなにオススメされているなんて。
この勢いのまま「線は、僕を描く」を即ゲット!

でも、購入後、すぐに不安な気持ちが襲います。
勢いで購入したものの、普段は小説にあまり関心の無い自分が、果たして最後まで読めるのだろうか。。

この不安は、すぐに杞憂に終わることになります。
数日間、「線は、僕を描く」の世界にどっぷりハマってしまったのです。

「線は、僕を描く」の3つの見所

「線は、僕を描く」を呼んで個人的に良かったところは、大きく分けて以下の3点です。

  1. 水墨画作品の文章表現
  2. 登場人物の心理描写
  3. 主人公の心の再生の過程
  4. 心に響く名言の数々

これから読む方には、この点が見どころになると思いますので、是非注目して読んでください。

まず、1の

水墨画作品の文章表現力に関して


「線は、僕を描く」の肝の部分である水墨画作品の表現が、たいへん巧みです。
目を閉じれば、水墨画作品が、自分の瞼の裏にありありと浮かびます。
初々しく水墨画を描くことを楽しむ様子、苦労の末に描きあげた作品を想像していると、水墨画に興味を持たずにはいられません。
かつて「キャプテン翼」に影響されてサッカー人口が増えたように、「線は、僕を描く」を読んで、水墨画をはじめる人が増えるのではないだろうか。
最近、自分も水墨画の真似事で春蘭をよく描いています。
分かりやすく「線は、僕を描く」に影響された1人です。

続いて、2の

登場人物の心理描写

そのほとんどは哀しみの描写で、何度も主人公の感情に寄り添い、切なさがこみ上げます。
でも、この哀しみがあるから、後の大きな感動につながります。

287ページあたり注目、エモーショナルな感情の洪水に要注意です。
ネタバレに近づいてきたので、2に関してはこの辺でやめておきます。


そして、3の

主人公の心の再生の過程

この点が最も感動的な共感ポイントです。
人生にはどうしようもなく孤独感を味わうことがありますが、そんなときでも愛ある存在が寄り添っていてくれていることに気付かされます。
誰も知りえない主人公の孤独を癒してくれるのは、人とのつながりと水墨画です。

最後に4は

心に響く名言の数々

とにかく名言や心を打つ感動的な言葉が多い!
読み終わった後、再び名言のシャワーを浴びたくて、すぐに再読遅読。
名言感動箇所に付箋しまくりました。
小説に付箋を付けたのは、この本が初めてです。
特に274ページ以降は、名言感動ラッシュで、付箋ラッシュ。

「線は、僕を描く」のテーマのひとつに、「生と死」があると思います。 主人公の青山霜介は、水墨画の師匠である篠田湖山に「形ではなく、命を見なさい」と指導されます。
水墨画の題材である草花の「生」に寄り添うことで、「死」の哀しみを徐々に克服し、再び生きる力を取り戻していく過程が感動的です。

水墨画とは、どんな芸術なのか?


水墨画に関して、もう少し触れておきたいと思います。
水墨画は、対象を観察し、見た通りに線を引く芸術だと思っていました。 それ自体間違いではないのですが、その浅い解釈が恥ずかしくなる程、水墨画は深く美しい芸術です。
水墨画における精神性とでも言えばよいのか、前述の師匠の言葉にも感じる深い洞察や禅的なアプローチ。
動機の純粋性とでも言えばよいのか、登場人物が結果より過程を大切にしながら水墨画に挑むエピソードにも感銘を受けます。

もともと水墨画の理念や技法は、禅の教えとともに中国からもたらされ、鎌倉時代の禅僧が日本の水墨画の原点を築き、現代の水墨画に継承されています。 その歴史的な背景も、西洋的な芸術とは異なる私が感じた水墨画の禅的な精神性に影響を与えているのかもしれません。

以上、「線は、僕を描く」について、ファンとしての激烈な感情を抑え、なるべく冷静に書いたつもりですが、少しでもこの本の魅力が伝われば嬉しいです。

終わりに、一見違和感のある「線は、僕を描く」というこのタイトル。
読み進めるうち、画仙紙に墨液がじわじわと染み込むように、そのタイトルの意味をじわりと理解出来ます。

「線は、僕を描く」読んでみたいと思われる方は、上記内容を踏まえつつ、ぜひ手に取ってみてください。
感動を共に共有できればうれしいです。
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