張猛龍碑の魅力

書道
投稿日:2026年9月17日
張猛龍碑の魅力

張猛龍碑とは?魏碑の最高峰と呼ばれる理由と臨書のコツを徹底解説

書道を学んでいると、ある程度基本が固まってきた頃に「そろそろこれに挑んでみない?」と勧められる名前があります。

「張猛龍碑(ちょうもうりゅうひ)」です。

楷書を学びたいなら、避けて通れないというか、避けて通らない方がよい存在。

今回は、なぜこの碑が「魏碑(ぎひ 北魏の楷書のこと)の最高峰」とまで称えられ、何百年もの間、書道愛好家たちに親しまれているのか、その理由と臨書のコツを紐解いていきます。

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そもそも張猛龍碑(ちょうもうりゅうひ)ってどんな碑?

まずはサクッと基本情報から押さえておきましょう。

張猛龍碑は、中国の北魏(ほくぎ)時代、正光3年(西暦522年)に建てられた碑です。 魯郡(ろぐん)の太守であった「張猛龍」という人物の素晴らしい政治や徳をたたえるために作られた、いわゆる頌徳碑(しょうとくひ)です。

現在は山東省曲阜(きょくふ)の孔廟(こうびょう)に保管されています。

なぜ北魏の時代にこんな傑作が生まれたのか?

北魏という時代は、仏教の広がりとともに全国で空前の「石碑ブーム」が巻き起こっていた時期でした。

当時の書風は、現在私たちが普段見かける整然とした唐代の楷書(欧陽詢など)とは一味違います。野性的で、力強く、どこかゴツゴツとした骨太なスタイル。これらを総称して「魏碑(ぎひ)」または「六朝楷書(りくちょうかいしょ)」と呼びます。

張猛龍碑は、その魏碑文化が熟しきったピーク時に作られた、いわば「北魏楷書の完成形」なのです。

張猛龍碑が「魏碑第一」と絶賛される3つの理由

書道史において、張猛龍碑は「魏碑第一(魏碑の中でナンバーワン)」とまで称されます。お世辞でも持ち上げでもなく、純粋に書のクオリティが異次元だからです。

どこがそんなに凄いのか、ポイントを3つに絞ってみました。

1. カクカクなのに動的。「静」と「動」の矛盾した同居

一般的な楷書というと「四角い枠にキッチリ収まった静かな文字」を想像しますよね。

ところが張猛龍碑は違います。一画一画がまるで生き物のように跳ね回り、今にも動き出しそうな勢い(躍動感)があるんです。

角ばった鋭い線を叩き込んでいるのに、全体で見ると不思議としなやかさや柔らかさも同居している。この「硬いのに柔らかい」「止まっているのに動いている」という矛盾をさらりと成立させているのが、最大の魅力です。

2. 「方筆(ほうひつ)」による鋭利で力強い刃物のような線

張猛龍碑の線を語る上で外せないのが、「方筆(ほうひつ)」という技法。

書き始め(起筆)や折れ(折頭)の部分で、筆先を打ち込んでバシッと角(角張り)を作ります。まるでナイフで石を切り落としたかのような、切れ味バツグンの鋭い線。この刃物のようなエッジ感が、作品全体にビシッとした緊張感を生み出しているわけです。

3. 計算を超えたアンバランスの美(危険な造形美)

文字の形(結構)をよく見てください。実は、かなり右上がりが激しく、左右非対称で傾いている文字がたくさんあります。

普通なら「倒れそう」「形が崩れている」となるところですが、張猛龍碑は絶妙な位置にドスッと強い重心を置くことで、倒れるギリギリのところで踏みとどまっている。この「崩れそうなのに絶対に倒れないスリル」こそが、見れば見るほどクセになる理由なんですね。

実際に臨書するときの「3つのちょっとしたコツ」

「よーし、自分も書いてみよう!」と法帖(お手本)を開くも、これがなかなか簡単ではない。

なぜなら、力強さを出そうとするとただの雑で汚い文字になり、形を綺麗に整えようとすると途端にヌルい大人しい文字になってしまいます。

挑戦する際は、ぜひ以下の3点を意識してみてください。

① 起筆の「角」を絶対にあいまいにしない

トメ・ハネ・ハライの始末、特に書き始め(起筆)で甘えを出してはいけません。

筆の穂先を斜め45度にしっかり打ち込み、バシッと角を作る。ここが丸くなってしまうと、張猛龍碑特有の「鋭いキレ」が根こそぎ消えてしまいます。最初の打ち込みに全集中です。

② 縦画(たてかく)には「かすかな反り」を持たせる

真っ直ぐな棒を引く感覚で縦画を書くと、一気に魅力が半減します。

わずかに内側に絞り込むような、あるいは外側に膨らむような、目に見えるか見えないかギリギリの「弓なりの反り」を意識してみてください。これが入るだけで、線にぐっと張り(テンション)が生まれます。

③ 左右非対称を怖がらない

「文字は左右均等に書くもの」という固定観念は、一旦どこかに投げ捨てましょう。

右上がりの角度を思い切って強くつけたり、偏(へん)と旁(つくり)の大きさをガラリと変えてみたり。手本に見える「一見、奇抜に見えるバランス」を怖がらずにそのまま真似することが、雰囲気を掴む一番の近道です。

まとめ:張猛龍碑は楷書の「筋トレ」であり「最高の刺激薬」

張猛龍碑は、決して楽に書ける手本ではありません。何十枚、何百枚と挑戦しても「全然書けない」と頭を抱えるかも。

しかし、この碑と向き合って手に入れた「線の強さ」「鋭い切れ味」「躍動感のある骨格」は、将来どんな書体を書くときにも間違いなくあなたの最強の武器になります。

綺麗にまとまった唐代の楷書にちょっと飽きてきた方、線に迫力を出したい方。 ぜひ一度、張猛龍碑という荒々しくも洗練された「魏碑の最高峰」に挑戦してみてください。きっと書道の新しい扉が開くと思います。

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張猛龍碑」2020年4月26日

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