宮本武蔵の花鳥画

水墨画
投稿日:2014年5月12日

無双の剣豪として知られる宮本武蔵は、画人としても一流でした。
剣の技術を極めるために、武芸だけでなく諸芸を学ぶ必要性を説いた武蔵は、禅の素養もあってか素晴らしい水墨画を数多く残しています。
武人武蔵にしか描けなかったであろう独特の魅力にあふれています。

宮本武蔵の作品には、鳥と草木との構図が多くみられます。
描かれた鳥の種類は、鵜・雁・カワセミ・カラス・鴨・鳩・モズ・雀・ひよどり・鶏・燕・鷲e.t.c
草木の種類は、梅・枯れ木・蓮・柳・葡萄・梅など

武蔵の花鳥図は伝統を踏まえて描かれていますが、自然に対する武人ならではの観察眼を感じます。
その点にこそ、武蔵作品の最大の魅力があるのではないかと思うのです。

武蔵が描いた画の中でも個人的に最も好きなのは枯木鳴鵙図です。
宮本武蔵 枯木鳴鵙図

偶然にも近所の美術館(和泉市久保惣記念美術館)に所蔵されていたので、複数回観ていますが、何度観ても飽きることがありません。

細い幹とわずかな枝を残した枯木にとまるモズ。
動きの無い静寂のようですが、散りのこった葉は揺れているようにも見えます。
その枯木には這い上がろうとする一匹の虫。
モズの鋭い眼とくちばし、とがった爪は獲物を狙う気迫に満ち、作品全体に緊迫感があります。

この作品を見つめていると、モズが武蔵自身にも見えてきて、空想の世界に引きずりこまれ、目を離すことが出来なくなります。